建設業の未来を守る事業承継ガイド
2024/07/28
建設業は日本経済の基盤を支える重要な産業であり、数十年にわたり地域社会の発展に寄与してきました。しかし、少子高齢化や技術革新の進展に伴い、業界内での人材不足や経営の継承といった課題が浮上しています。建設業と関係が深い行政書士も、サポート役、相談役として建設業者を中心とした事業者さまたちの事業承継について、支える立場です。
本コラムでは、事業承継の重要性、具体的な手法、成功事例などを紹介し、企業が次世代へと円滑に移行するための道筋を示します。これからの建設業を支えるために、ぜひご一緒に考えていきましょう。
目次
事業承継の意味とは?
事業承継を考える中小事業者さまが増えております。2024年上期の倒産数は帝国データバンクの調べによると4887件です。前年同期と比べると22.0%増。「不況型倒産」が全体の8割を占めますが、「経営者の病気、死亡」による倒産は2000年以降で一番多くなったそうです(記事はこちら)。
建設業で言えば、資材価格の高騰や人手不足により、倒産数は三年連続で増加しているそうです。30年以上続いた老舗企業の倒産も今年の上半期は多かったそうです。
このような現状をみると、事業承継を考えるのも一つの手かと思われます。どのように承継したらよいのか? 受け継いでくれる人はいるのか? シンプルにたたむのか? 家族でない人に承継してもらうことはできるのか?
様々な疑問があるかと思います。
事業承継の重要性とメリット
事業承継は、企業の継続性や発展において極めて重要なプロセスです。個人の事業だからたたむだけでと考える方もいらっしゃると思います。一方で、それまでひいきにしてくれていたお客様への義理というものもあるのも事実でしょう……。どのような選択肢を取るのが良いか。様々な関係者と話をして、結論を出すことになるのではないかと思います。
行政書士として、事業承継に係れる点は主に二つあります。
1.事業承継計画の作成サポート
2.許認可の事業承継
この二つです。
事業承継計画を立てることは、経営者やその家族にとってさまざまなメリットをもたらします。 まず、事業承継を早期に考えることで、企業の資産や負債を適切に管理し、次世代へのスムーズな引き継ぎが可能になります。事業承継・引継ぎ補助金という補助金も存在しています(事業承継・引継ぎ補助金のページ)。引継ぎのタイミングで経営革新を行う場合、支援を期待できます。
計画的な承継は、従業員の不安を軽減し、会社のモチベーションを維持するためにも重要です。また、後継者が事業を引き継ぐ際のノウハウや顧客情報などの継承は、企業の競争力を保つ要素となります。
「事業承継はバトンタッチ」というイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、バトンタッチをして、即引退ということを考えると社員も後継者もバタバタしてうまくいかないことがあります。「事業承継はソフトランディング」というイメージで進めた方が結果的に後継者の負担が少なくなり、社員も安心することが出来ます。
二つ目の、許認可の事業承継は主に相続であったり、M&Aの時に行うものです。建設業の会社をM&Aで吸収したい、個人事業主として建設業をやっていたが、会社に変更してそこで承継したいといったような場合に、行政書士のサポートが役に立ちます。
建設業許可の例で言えば、建設業許可を承継する場合のメリットは、期間が新しく5年になること、手続きに際して、都道府県へ支払う手数料がかからないことが挙げられます。9万円程度安くなるということはメリットです。ですが、手続きは新規よりも気を遣うところもあるのですが……。
成功する事業承継のプロセス
先ほども述べましたが、成功する事業承継のプロセスは、計画的かつ段階的に進めることが重要です。行政書士としての役割は、このプロセスを円滑に進行させるために多岐にわたります。
まず、事業承継の計画を立てる段階では、現状分析が不可欠です。事業の強みや弱み、財務状況、顧客関係の把握を行い、次に承継候補者の選定を行います。候補者には、経営者としての資質や意欲が求められます。適切な人材を選ぶことが、成功のカギとなります。
次に、法律的な手続きを整備することが欠かせません。行政書士は、遺言書や法人の定款の見直し、譲渡契約書の作成を通じて、法的リスクを最小限に抑えるサポートを行います。
さらに、円滑な引き継ぎのためには、社員や取引先へのコミュニケーションも大切です。承継者が新しいリーダーシップを発揮できるよう、フォロー体制を整えることも忘れてはなりません。 総じて、事業承継は単なる後継者の選定に限らず、戦略的なアプローチが求められます。
事業承継における法律と税務の注意点
事業承継は、中小企業にとって重要な課題の一つです。特に法律と税務の観点からの注意点は、後々のトラブルを避けるために欠かせません。
税務面では、事業承継に伴う贈与税や相続税の問題があります。
事業承継税制というものが現在は存在しており、一定の要件を満たした承継者は一部納税が免除されます。そのためには特例承継計画の計画書を作成して、認定支援機関より所見を貰い「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づく認定は都道府県の窓口へ提出する必要があります。
行政書士は事業承継において、特例承継計画作成のサポートのみならず、補助金申請や許認可の支援についても行っております。建設業者の皆様で事業承継をお考えの場合、ぜひ行政書士にご相談くださいませ!